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■■ガイダンスカリキュラム(GC)の広場
−「授業型の生徒指導」の最新情報−

 
4.シンポジウム(2010)
ガイダンスカリキュラムを担う「ガイダンスカウンセラー」の仕事

話題提供1 校内担当者として
 
   
   
●趣旨説明
2010.12.16 UP
定着させるためのプログラムマネジメントの重要性
 ―深美隆司先生―


●松原第七中学校の様子
 松原市は大阪市のすぐ南にある4キロ四方の小さな,人口12万人ほどの町です。松原第七中学は,十数年前は周辺の中学校がそうであったように,生活指導面で厳しい状態がありました。一般的に言うと自己肯定感の低さは普通は引きこもるか荒れるかとして表れます。2003年に文科省の研究開発を受けた時点では,不登校生の率は6パーセントを超え,ケンカなどの事例も多くあったようです。
 私が松原七中に赴任して5年目になりますが,松原七中の変化を感じています。それは 2003年から文科省の研究開発学校の指定を受けて今年で8年目になり,人間関係づくりあるいは不登校生徒支援を中心に置いて学校づくりをしてきたことが,実を結んでいるのだと思います。

●人間関係学科とは
 本校の人間関係学科の概要を説明します。〔資料 pdfファイル〕
 資料1頁目に効果測定の結果の推移を示しました。
 次のページからがそのもとになる学校生活調査のうちのアンケートの質問用紙です。
 その次が松原七中の3年間のプログラムです。プログラムの中身としてはまず,このグループアプローチの性格をもとにして「日常性」「テーマ性」「クロス性」という種類を設定しています。「日常性」の例として,自己開示つまり自分のことを出し合うトーキング系の授業では,自分のことを出し合う中で,普段の子供たちの関係性をつくっていくのです。「テーマ性」とは,例えばコミュニケーションというテーマを設定します。しかしコミュニケーションとは何かなどは口で説明してもわかりません。あるときは,「あいうえお」と言いながら,それに感情を乗せて言うようにロールプレイをするうちに,実はコミュニケーションの本質は,非言語的な部分が大半を占めているんだというような認識を得たりする。また,ストレスに対してどう自分は対処していくのかというストレスマネジメントをテーマにするなどのように,いくつかのテーマ性をもったものです。
 「クロス性」のカテゴリーには,例えば修学旅行が入ります。修学旅行に行ったときに,「こんなケースがあったときにはどうしますか」という課題を設定します。あるいは進路選択もクロス性に入ります。進路選択の中で面接があります。この面接に向けて皆さんどうしましょうということを,実際にロールプレイングや実習を通じてやっていくのです。
 こういう3つの性格をもちながら本校のプログラムは進んでます。
 2007年度から2009年度までの3年間,幼小中と取り組んできたことを,本校校区の人間関係学科実施指針ということでまとめたものを最後に付けています。

●ガイダンスカウンセラーの仕事1「人間関係づくりの授業」をつくり,理論づける
 この「効果測定等に見るガイダンスカリキュラムの効果」を見るとわかるように,「学校生活が楽しくなれば悩みが減る」→「悩みが減ればストレスが減る」→「ストレスが減ればもめ事が減る」→「もめ事が減れば不登校は減る」という考え方で取り組みを進めております。実際に,問題と思えるような生徒たちの行動はすっかり影をひそめ,落ち着いた学校になっています。
 学校が落ち着くと生徒たちはすごくおぼこく(子どもっぽく)なります。これがいいかどうかの論議は別のところでしないといけないのですが,中学校2年生でも3年生でも,若干服装がだらっとした子だとしても,言動は非常に幼いです。そういう中で子供たちの関係性がつくられる必要があると思っています。中学校1年や2年で問題を起こして,もうすでに人生の展望を失うということは,望ましくないのではないかと思うのです。
 そういう,(1)人間関係づくりの授業をつくっている,あるいは引っ張っている,(2)こういうふうに理論付けていくのが私の仕事になっています。

●不登校生徒の支援は家庭まで求められている現状
 私が担っている仕事の2つめは,不登校生徒の支援の枠組みをつくり,その支援の中身を引っ張っていくことです。
 いまや支援は家庭からという時代になっています。家庭訪問をしたら,保護者が出てこない。晩になっても電気がつかない。だれが何回行っても反応がない。住んでいるのか,生死さえもわからないという状態のときに,何かのきっかけで中に入ることできたことがありました。
 電気もガスも止まり,出ているのは水道だけで,物が散乱しているという場面に出くわしたときに,黙って帰れるでしょうか。ほとんどの教員は店へ走って,とりあえず食べられる2〜3日分の食料を置いていくでしょう。余裕があればカセットコンロを差し入れるでしょう。
 学校教員としてそこまでしていいのかという議論は付きまといます。しかしそういう場面に出くわしたら支援を差し伸べるというスタンスでなければ,今の不登校生徒支援というのは成り立たないほど,子供たちあるいは大人も含めた生活が崩壊しているという現状だと思っています。

●ガイダンスカウンセラーの仕事2「不登校生徒の支援」の枠組みづくりと推進
 本校では不登校生徒の支援に関する会議を時間割を1時間とって行っています。校長,教頭,私などの中心メンバー,学年の代表,スクールカウンセラー,養護教員,たまにはアドバイザーに入っていただくこともあります。
 その中で不登校生の支援対象になっている保護者のアセスメントをしています。ある年は支援対象となっている不登校生の保護者のすべてが,関係諸機関や市役所の子供支援課につなぐような,一般的に考えて支援が必要な状態でした。そこで,保護者支援率というものを設定してみました。保護者支援率とは,不登校や長欠になっている子どもたちの保護者が要支援かどうかをアセスメントするものです。そして,すべての要支援の子どもたちの保護者をアセスメントしてみると100%要支援だったということです。つまり,いじめ等の学校内の事情でのみそうなっているのではないということを確認したということです。保護者支援率は,常に100%なのかどうか,真摯に見ていかなければならないと思っています。
 いっぽう,いじめによって不登校になってしまった,先生との関係によって不登校に陥ったなどのように,保護者支援がその子に必要でない場合があります。また,緊急性がない場合は,不登校生を出さないことに取り組みます。逆に不登校の事態が生じたときは早期解決のために全力を尽くす。
 このように不登校の多様な実態を踏まえて対応できることが,ガイダンスカウンセラーの重要な仕事の1つになっているのではないかと思っています。

●ガイダンスカウンセラーの仕事3 校区の幼小中学校連携の推進
 私のもう1つの仕事は,この2年間,校区の幼小にも週に2〜3回行っていたということです。
 するとさまざまなことが見えてきました。一般化はできないかもしれませんが,ひと言でいうと,幼と小,小と中の間の連携がむずかしいのです。校区の話を聞いていると,幼稚園はできる,中学校もできる,小学校はできまないという事柄があるように思います。それは「子どもに,選んで,させる」というものです。
 子供に選ばせるというかかわりが小学校は苦手なように思います。たしかに幼稚園,保育園,どこへも行っていない子から集めた子どもたちをつながらせるのが小1の課題です。学校生活の枠を身に付けさせることが非常に大事です。小学生ですから大人に対する依存性も高いです。すると予定調和的な,答えはここだよみたいな,そんな学びの学校文化が強くなると思います。
 ところが中学校や幼稚園はそんなことはできません。どちらも思春期対応,自分探しの時期ですから,それに合った手法になります。なので摩擦が起きやすいのです。

●校区の幼小中で共催する授業検討会
 昨日は松原七中で校区の研究授業を全クラスを公開して行いました。授業後は3つの分科会に分けてファシリテーターを1人おき,発言をどんどんホワイトボードに書き出しながら会議を進行しました。すると幼稚園の先生,中学校の先生,小学校の先生も発言をすることができます。そういう会議のありようを,この3年間をかけてつくってきました。催し物,例えば校区のお祭りなどで顔を合わせてもなかなかできない人間関係を,ファシリテート風な会議の持ち方を通して引き出していくということもやっています。

●教育機能が発揮された学校でのカウンセラーのあり方とは
 最後ですが,本校にスクールカウンセラーが週1回来ていますが,スクールカウンセラーをうまく活用するということは,なかなか難しいことだと思っています。どういうことかと言いますと,教員と子どもたち,あるいは子どもたちどうしの間に一定以上の関係性ができてくると,実はその関係性の中で,ひととおりのことは解決していくからです。つまり,一次支援,二次支援を自前で取り組めるようになってくると,実は三次支援である関係諸機関との連携のみが必要になってくるからです。
 ここからいろいろなことが見えてくると思います。例えばスクールカウンセラーの地位向上です。あるいは学校運営への参加です。そういうシステムづくり。または教員の側からの,まさに今日のテーマのガイダンスカウンセラー的な仕事の環境づくりが急務になっているのではないかと思います。
 どこの学校,どこの校区でも,あるいはどこの行政単位でもそういう実践が広がれば全体的な底上げに結びつくことでしょう。これからネットワークづくりシステムづくりをやっていかなければいけないと思っています。



以上,深美隆司 2010.10.30 第8回日本教育カウンセリング学会自主シンポジウム「ガイダンスカリキュラムを担う『ガイダンスカウンセラー』の仕事」より
 
   
   
2009年シンポジウムの記録はこちら   
2008年シンポジウムの記録はこちら                 
 
   
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